- ■ シーズン前
- 10戦中6戦が有効である。
- この年は、多くの新参チームがあった。ブラバム、ATS、BRP、シロッコ、ステブロ…。このうちブラバムは前年に既に登場している。BRPとは、プライベーターのUDTレイストール・レーシングが、自製シャシーで挑んできたものである。ポルシェの名前が見えるが、C.G.ド・ボーフォール伯爵の個人所有のものである。
- ATSとは、元フェラーリのカルロ・キティとロモロ・タボーニらが設立したものである。フェラーリ内での人間関係が上手くいかずに、分離独立したものである。正式名称を Automobili Tourismo e Sport という。'80年代のATSとは無関係である。ドライバーも、P.ヒルとG.バゲッティの元フェラーリ勢が選ばれた。自製V8エンジンを開発し、ロードレースを含めたプログラムだったが…。
ワークス・チーム |
エンジン |
ドライバー |
前年は? |
BRM |
BRM(V8) |
グレアム・ヒル リッチー・ギンサー |
残留 残留 |
ロータス |
クライマックス(V8) |
ジム・クラーク トレバー・テイラー |
残留 残留 |
クーパー |
クライマックス(V8) |
ブルース・マクラーレン トニー・マッグス |
残留 残留 |
フェラーリ |
フェラーリ(V6) |
ジョン・サーティース 他多数 |
ローラ |
ブラバム |
クライマックス(V8) |
ジャック・ブラバム ダン・ガーニー |
残留 ポルシェ |
ATS |
ATS(V8) |
フィル・ヒル ジャンカルロ・バゲッティ |
フェラーリ フェラーリ |
BRP |
BRM(V8) |
イネス・アイルランド |
プライベーター |
プライベーター |
車体/エンジン |
ドライバー |
前年は? |
ロブ・ウォーカー |
クーパー・クライマックス(V8) |
ヨアキム・ボニエ |
ポルシェ |
ポルシェ |
ポルシェ(F4) |
C.G.ド・ボーフォール ゲルハルト・ミッター |
残留 新人 |
- ■ 6月9日 第2戦 ベルギー
- 予選8位のジム・クラークは、オープニングラップ中に先頭に立つと、そのまま嵐のサーキットを勝利の方程式で駆け抜けていった。結果、後続との差が5分にもなった。この5分という差も驚きだが、予選8位から1周で先頭へというのも凄まじい。下位グリッドからのオープニングラップ1位通過の記録になっている。
- ■ 6月30日 第4戦 フランス
- 押し掛けスタートにより、3位G.ヒルのポイントが剥奪されている。
- クラークは2戦連続で完全優勝を果たした。2戦連続でとなると、'52年のアスカリ以来である。実際、かの9連勝に匹敵するような強さで、王座に突き進んでいく。前GPでは全車を周回遅れにした。
- ■ 8月4日 第6戦 ドイツ
- 予選で常に上位を維持し、今回初めて2位からスタートしたジョン・サーティースが、ついに初勝利を遂げた。5周目でクラークを振り切ると、後続の追随を許さなかった。
- ポールポジションからチェッカーまでをトップのまま独走して勝つ、でなければリタイヤする、というクラークの走りには、それを裏付けるデータがある。2位でゴールしたことが一度しかないのだ。それがこの一戦でのことである。
- ■ 10月6日 第8戦 アメリカ
- J.クラークの3位は、スタート時のマシントラブルで周回遅れとなった状態からの結果であり、驚異的である。クラークという鬼の居ぬ間に、G.ヒルとJ.サーティースが激しく争い、BRMがワンツーフィニッシュを決めた。
- ■ 10月20日 第9戦 メキシコ
- ☆メキシコ・シティ…メキシコの首都は海抜約2200mに位置する。富士山ならば5合目という高地は空気が薄く、気圧が低下する。エンジンの燃料混合比の調整が難しい。1.2キロの直線もあれば、1速まで落とすヘアピンカーブもある。路面も舗装が十分でなかった。マシンにもドライバーにも、メカニックにも厳しいサーキットである。後にエルマニョス・ロドリゲス・サーキットと呼ばれるようになる。
- ■ シーズン後
- 10戦で7勝…。J.クラークは有効得点で考えられる最大の得点を記録したばかりか、その上に1勝を積み重ねた。クラークの総得点は全選手の得点の30%近くになる(73÷246×100=29.7)。これは、得点制度が若干異なるが、J-M.ファンジオやA.アスカリの独走に匹敵するものである。時代を代表するドライバーがここに誕生した、と言っていいだろう。
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