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  F1今昔物語 1960年 ダイジェスト

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 ■ シーズン前
 10戦中6戦が有効である。ポイント制度に変更があった。ファステストラップに1点与えられていたのが、「6位に1点」に変更になった。以後もこのルールが続き、FLへの加点は行われない。
 前年のクーパー・ミッドシップ車の圧倒的優位を受けて、ロータス、BRMに、フェラーリまでもがシーズン中ミッドシップ化に踏み切った。
 新王者クーパーは、前年型を改良した新車T53で、これを迎え撃つ。クーパーのマシンは汎用性が高かったので、数年前のマセラティのように、あまたのプライベーターがこれを用いて参戦した。

ワークス・チーム エンジン ドライバー 前年は? タイヤ
クーパー クライマックス(L4) ジャック・ブラバム
ブルース・マクラーレン
残留
残留
DL
フェラーリ フェラーリ(V6) フィル・ヒル
ウォルフガング・フォン・トリップス
リッチー・ギンサー
他多数
残留
残留
新人
 
DL
BRM BRM(L4) ヨアキム・ボニエ
グレアム・ヒル
ダン・ガーニー
残留
ロータス
フェラーリ
DL
ロータス クライマックス(L4) イネス・アイルランド
アラン・ステイシー
ジム・クラーク
ジョン・サーティース
残留
残留
新人
新人
DL
他多数        
プライベーター 車体/エンジン ドライバー 前年は? タイヤ
ロブ・ウォーカー・レーシング クーパー・クライマックス(L4)
ロータス・クライマックス(L4)
スターリング・モス クーパーpvt
BRMpvt
 
BRPヨーマン・クレジット クーパー・クライマックス(L4) トニー・ブルックス
オリビエ・ジャンドビアン
クリス・ブリストウ
フェラーリ
フェラーリ
新人
DL
エキュリー・ブルー クーパー・クライマックス(L4) ハリー・シェル BRM DL
スクデリア・チェントロ・スド クーパー・マセラティ モーリス・トランティニャン
マステン・グレゴリー
クーパーpvt
クーパー
DL
他多数        


 ■ 2月7日 第1戦 アルゼンチン
 B.マクラーレンは、またしても予選下位から勝った。相次ぐ上位の脱落によって終盤にトップに立つ点も同じである。これで驚きのGP2連勝となった。予選13番手からの優勝は、10年以上破られない下位グリッドからの優勝記録となった。また、このレースでの彼のファステストラップは全体の11番目であった。これは仰天ものである。全ドライバーのレース中のファステストラップは見つけ難いものだが、11番目というのはおそらく最低位FLによる優勝の記録ではないだろうか!? それだけ彼より速く走った上位が次々と脱落していったということになる。
 プライベーターのC.メンディテグイは、車体→クーパー、エンジン→マセラティというマシンに乗って得点をあげた。彼の得点はコンストラクターズ選手権において、1位のB.マクラーレンのクーパー・クライマックスとは別扱いになる。この場合のクーパーを、当サイトでは「クーパーpvt」と表し、「プライベーターで且つエンジンが異なる」ことを示すようにする。

 ■ 5月28日 第2戦 モナコ
 スターリング・モスは開幕戦はクーパー・シャシーだったのを第2戦からロータス・シャシーに乗り換えた。マシンは変わってもチームは同じロブ・ウォーカー・レーシングである。こういう場合、コンストラクターズ・タイトルでS.モスが付与する得点は、初戦はクーパーで第2戦はロータスに分けられる。飽くまで【車体+エンジン】がコンストラクターズ選手権を戦うのである。そこにチームは無関係である。別のチームがロータス・クライマックスで得点を挙げても、ロブ・ウォーカーのモスがあげたと同じ「ロータス」の得点となる。ただし、第1戦のB.マクラーレンとC.メンディテグイのように、エンジンが異なっていれば、別扱いである。
 S.モスはロータス・シャシーでの初戦を見事な走りで勝利に結びつけた。しかし、これはチーム・ロータスの初勝利とは言えない。そう言えるのは、ワークス・チームが勝ったときのことである。

 ■ 5月30日 第3戦 インディアナポリス
 インディ500がF1の一戦として扱われていたのは、この年までである。皮肉にも、F1でなくなってからの方が、F1ドライバーの参戦が盛んだったかもしれない。J.クラークとG.ヒルは'65、'66のインディを制した。

 ■ 6月6日 第4戦 オランダ
 ダン・ガーニーのBRMが、タルザン・コーナーでブレーキ不調に見舞われ、時速200キロでコースアウトした。ガーニーは無事だったものの、観客2名が死んだ。BRMにとって一年前は悲願のF1初優勝の舞台だったが、今年は禍根を残す結果となってしまった。
 事故死と言えば、5月13日シルバーストンでの非選手権戦でベテランのハリー・シェルも犠牲となった。雨中でスピンし、運悪くマシンから振り落されてしまったのだ。ひょうきんな性格でドライバーたちに人気があったアメリカ人である。

 ■ 6月19日 第5戦 ベルギー
 この一戦では二人のドライバーが死亡した。
 一人はイギリスのクリス・ブリストウである。激しい6位争いの19周目にクラッシュした。アームコという当時の防御用フェンスにぶつかって、首が切断されたという話しが残っている。参戦2年目で22歳という若さであった。
 24周目になると、またイギリス人になるがアラン・ステイシーの顔面に鳥が衝突した。マシンはクラッシュし、彼の命を奪った。余談になるが、彼は以前にも事故で右足を失い義足を使ってレースを戦っていた。
 また、我等が雄スターリング・モスも予選を疾走中に後輪が外れ、両足骨折の重傷を負った。しばらく戦列を離れることになり、今年の無冠が決定的となった。予選では他にもマイク・テイラーもステアリング故障によるクラッシュで上半身を骨折していた。暗黒の週末である。

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 ■ 7月3日 第6戦 フランス
 ベルギー人、オリビエ・ジャンドビアンが2戦連続で表彰台に立った。F1で光ったのはこの頃だけだったが、ル・マンでは同じ頃フェラーリで4回優勝した。フェラーリはこの当時、フォーミュラだけでなくスポーツカー・レースにも力を入れていた。

 ■ 7月16日 第7戦 イギリス
 BRMのG.ヒルはここまで予選をすべてトップテン以内につける好調さを見せた。ここイギリスGPではスタートでの出遅れを取り戻し、レース終盤にトップに立った。FLを記録する果敢な追い上げであった。しかし残り6周でスピンアウト! 初優勝はならなかった。

 ■ 8月14日 第8戦 ポルトガル
 両足骨折から2ヶ月もたたないうちにS.モスが復帰してきた。しかし、"スピン後にコースを逆走"という珍しい理由で失格となった。
 I.アイルランド、J.サーティース、J.クラークの若手3人が次々と表彰台にあがったり、PPやFLを獲得したりしている。プライベーターのS.モスだけでなく、ワークスのロータスにも活気が見えてきた。

 ■ 9月4日 第9戦 イタリア
 '56年以来4年ぶりにバンク部分を用いてレースが行われた。イギリス勢はバンク部分の舗装が不十分だとしてボイコットした。クーパーで参戦している者も見えるが、皆プライベーターである。
 それはフェラーリの敵がいなくなったことを意味する。よって、昨年AVUSでのT.ブルックスによる勝利以来、1年余ぶりにフェラーリに凱歌があがった。勝者はアメリカ人のフィル・ヒルであった。これまでの勝者の国籍を見ると、イタリア、アルゼンチン、イギリス、フランス、オーストラリア(J.ブラバム)、スウェーデン(J.ボニエ)、ニュージーランド(B.マクラーレン)となる。これにアメリカが加わり、またひとつウィナー輩出の大陸が増えた。要するに、世界選手権らしくなった。また、これはフロントエンジン車の最後の優勝でもある。
 ジュリオ・カビアンカは、プライベーターとして本戦でキャリア唯一のポイントを記録した。しかし、翌年の6月のテスト中、マシントラブルが原因で事故死した。サーキット外に飛び出してタクシーと激突し、3人が巻き添えになったという。

 ■ 11月20日 最終の第10戦 アメリカ
 ☆リバーサイド…カリフォルニア州に位置する。1度きりの開催である。インディ500に代わるアメリカでのF1の舞台がいろいろ模索されている。

 アメリカ産のチームがこの一戦に登場した。その名をスカラブという。資産家の息子ランス・リベントロウ(24歳)が、北米スポーツカーでの大成功のあと次の目標にF1世界制覇を定めた。そして財力にものを言わせてアメリカ中のデザイナーやエンジニアを招き、純アメリカ製F1マシンを開発したのだ。
 今季ここまで4戦に出場したものの、まったく歯が立たなかった。一旦撤退しマシン改良に専念して本戦に挑んだが、それでも友人が決勝10位に入るのがやっとだった。それは、ここ数年で証明され切った"ミッドシップ勝利の方程式"にフロント・エンジン車で挑んだためであった。最新の流行に背を向けた計画によってスカラブは時代の徒花に終わった。L.リベントロウは1972年に飛行機事故で他界した。享年36歳。

 ■ サーキットを去るウィナーたち
フロイラン・ゴンザレス Froilan Gonzalez
生年月日 1922年 10月5日
国籍 アルゼンチン
年次主なチーム順位優勝PPFL出走
1950マセラティpvt-2
1951フェラーリ3116
1952マセラティ811
1953マセラティ625
1954フェラーリ21137
1955フェラーリ1211
1956マセラティ
ヴァンウォール
-2
1957フェラーリ151
1960フェラーリ-1
23526

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